こんにちは、KJです。
いやぁ、ほんと、今回はまいりました。
何と言っていいのやら・・・こういう感覚久しぶりです。
何のことかと言いますとこれです。
本のエンドロール (講談社文庫) 文庫
安藤 祐介(著)
¥1,012
小説やマンガの印刷を主体とする印刷会社を舞台にした小説で、場所は東京の護国寺駅近く。
慶談社の関連会社である豊澄印刷の営業マンを軸にストーリーは進行します。
物語の冒頭、新卒向けの会社説明会で参加者から「夢をお聞かせいただきたいのですが」との質問を受ける場面があるのですが、二人の営業マンはそれぞれ次のように答えます。
- 夢は、目の前の仕事を毎日、手違いなく終わらせることです
- 本を刷るのではなく、本を作るのが私たちの仕事です。印刷会社はメーカーなんです
印刷会社に籍を置く身としては二人の言葉のどちらにも「なるほど・・・」との思いを感じるわけですが、しかしまあ、印刷会社の営業マンってほんと大変な仕事なんだなと改めて思ってしまいました。
ある日突然消息不明になってしまう編集者、色校を何度も取ったあげく最後の最後で仕様変更を押し付ける著名ブックデザイナー、精神的に不安定で印刷会社を変えろといいだす新人作家。
会社に戻れば現場の人間からきつーい言葉を浴びせられても、仕事に追われて落ち込む暇もない。
コストと印刷機の稼働率に悩む日々が続く・・・。
上記以外にも日々の仕事で発生する数々のトラブル(これが実にリアルで笑ってしまった)もあって、読んでいた胃が痛くなるというか、もし自分がその立場だったら逃げ出したくなるほどです。
そんな悪戦苦闘の日々を送りながらも、主人公の営業マンが「印刷会社はメーカーなんです」との思いを胸に仕事を続けるうちに、はじめは批判的だった同僚や工場の人達も徐々に理解を示し協力してくれるようになっていく・・・。
物語にはいろんな人物が登場しますが、印象に残るのは個性的な工場の職人さんたちです。
特色作りの名人や、印刷機に「今日もがんばれよ」などと話しかけながら仕事をするベテランオペレータなど、魅力的な職人さんたちの仕事に対する姿勢には学ぶところが数多くあります。
私の拙い文章ではこの本の魅力を伝えきれませんが、印刷会社や印刷に関連する仕事をしている人はもちろん、本好きの方にもぜひ読んでいただきたい一冊です。
・・・
ところで本の最後には「奥付」というページがあります。
通常は出版社のほかデザイナー、印刷所や製本所などが記載されていますが、この本には「奥付」とは別にエンドロールがあります。このページを見たときは嬉しくなりました。
なおこの本と連動したYouTube動画もあります。
こちらは豊澄印刷ならぬ 豊国印刷 さんが撮影に協力しており、印刷の工程全体を通して見ることができます。
こちらもぜひご覧ください。
本のエンドロールができるまで
本のエンドロールができるまで 造本解説編
(こちらは本ができるまでの各工程の字幕解説付きです)
それではKJでした!