こんにちは、KJです。
先月の中旬にnu boardの新しいアイテム、「nu board JABARAN(ジャバラン)」を発売しました。
実はこのJABARAN、ある意味、5年越しで開発したともいえる商品です。
といいますのも、2011年のISOTで「nu board」とともに新商品として展示したなかに「WE PAD」という商品がありました。
サイズは当時の最新iPadとほぼ同じ、見開きとして使えるホワイトボードです。
この「WE PAD」、ISOTでは「nu board」を上回るほどの好評を博し、某量販店で発売寸前まで話が進んでいたのですが、折り目部分の強度に問題があることが判明し、泣く泣く断念することになってしまったという経緯があります。
下の写真を見ればわかるように、真ん中のスジの部分で2つ折りにするという構造は、一見「JABARAN」とまったく同じですが、作り方に大きな違いがあります。
「WE PAD」の場合は、開きをよくするために「半抜き」という方法を用いています。
分かりやすい例として、シールを思い浮かべてください。
シールの部分には切り込みがついていますが、台紙は切れずにそのまま残っています。コンマ何ミリの精度でシール部分のみをカットする加工方法です。
「nu board」もそうですが、ボード面はある程度の厚みを出すために何枚かの紙を貼り合わせる「合紙(ごうし)」という加工をしています。
具体的には厚紙を覆うかたちで「消せる紙(けせるし)」を両面に貼っています(この場合は3枚合紙といいます)。
ただし、合紙をすると全体が厚くなると同時に非常に硬くなります。
そのままでは折り目を入れることができないので半抜き加工を行い、「消せる紙」1枚で左右のボードを繋ぐ構造となっていました。
一番下の「消せる紙」で左右のボードを繋いでいる状態
写真では剥がれも見られる
ただし、紙1枚のみで左右のボードを繋いでいるため、スジの部分にかかる負荷が大きく、キズなどが生じるとその部分から二つに割れてしまうという現象が発生しました。
発売を断念してからも 「何かいい方法はないか?」 と検討を続けましたが、なかなかいい解決方法が見つかりません。
そんなとき、ある製本関係のかたから教えていただいたのが、「溝付き製本」という加工方法です。
ハードカバーの本では表紙に厚みを持たせるために芯材として厚紙が中に入っているのですが、そのままでは固くで開くことができません。
そこで折り目の部分だけは、厚紙を抜いてあります。(つまり空洞になっています)
「JABARAN」はA4サイズのボードが4枚つながって形になっていますが、これは、この「溝付き製本」で作られています。
こうすると、折り目の部分が紙2枚(表面と裏面)となるため、強度はぐっとアップし、割れや剥がれ(心材となっている厚紙から「消せる紙」が剥がれてしまう)にも強くなります。
作業としては手作業の部分が多くなるため加工には最新の注意が必要ですが、職人さんが試行錯誤を重ねてくれ、最終的にはかなり満足のいく仕上がりとなりました。
私も印刷会社に勤めているわけですから、知識としてはこういう製本方式があることは知っていましたが、実務として経験することがなかったことから思いつかなかったのかもしれません。
5年前にこの加工方法を思いついていればこれほど発売が遅くなることはなかったかと思うと、「知識は活かしてナンボ」 ということを改めて思い知らされた次第です。
それでは、KJでした!