皆さん、こんにちは。休職制度を利用して中国は遼寧省の東港市でボランティア日本語教師をしているKHです。中国の旧正月のお休み中、私も日本に帰っていたのですが、3月初旬にまた中国にやってきました。
同じ学校のベテラン日本語教師のT先生と一緒に、成田から中国の大連空港へと飛び、その後、大連から「長距離乗り合いバス」を利用して東港に到着しました。
皆さん、中国の長距離バスに乗ったことってありますか?今回はその時の話を、ちょっと聞いてください。
2006年春に改装された、大連空港の出発ロビー。
新しいだけあってキレイで明るい雰囲気
まず大連空港からこの長距離乗り合いバスのバスステーションまで、タクシーで移動しました。大連のバスステーションは2つあって、一つは高速道路を走る長距離バス用、そしてもう一つが今回利用した乗り合いの長距離バス用です。
空港でスーツケースをゴロゴロいわせながらタクシー乗り場まで歩いていると、そのへんにいるタクシーの運転手さんが客引きで話しかけてくるんですが、無視してタクシー乗り場に並びます。こうした客引きの運転手さんたちは、必ずしもいわゆる「ぼったくり」ではないのですが、長距離の乗り合いタクシーだったりするので、今回は却下。
大連のバスステーションの待合室。
奥に見える「為人民服務」の金文字がいかにも中国っぽい
バスステーションに着いて、同行の先生にチケットを買ってもらっている間、私は建物の外で荷物とともに待っていました。すると、見知らぬ若い男性が話しかけてきます。
「あんた、どこ行くの?(もちろん中国語)」
「え、東港ですけど・・・(この人誰なんだろうと懐疑的になっている)」
「じゃあ、このバスだよ。丹東行きのやつ。お連れさんがチケット買ってるみたいだから、今のうちに荷物をバスに入れちゃえば?」
「え、でもでも、帰ってくるまで待ってます(どうやらバス関係者らしいが、日本と違って制服を着ているわけでもないし、イマイチ不安なので、こうした対応に)」
と、そこに同行の先生が戻ってきました。男性はすかさず、
「あ、お連れさん帰ってきたじゃん。早く荷物入れなよ」
「この人、誰?」(T先生)
「なんか、このバスの関係者らしいんですけど・・・東港なら、このバスだよって」
とかなんとか言っているうちに、大型バスの下部のトランク(というのでしょうか?)に男性はさっさと荷物を入れていきます。
「待合室は中だよ。出発は2時半ね」などと言いつつ、T先生と私を先導して、建物の中に連れていってくれます。
荷物検査(があるんですよ、適当だけど)とも顔見知りの様子。
どうやら、怪しい人ではないようだと、このへんでどうにか胸を撫で下ろしました。
中に入っていきますと、雑然としていてちょっと古っぽい感じが、いかにも庶民御用達の乗り合いバスの待合室という感じです。
1時間ほど待って改札が開き、バスに乗り込みました。
先ほどの男性は、やはりこのバスの車掌さんで、乗り込む人をテキパキさばいたり、乗客の荷物をトランクに詰め込んだりと、なかなか働き者。車掌見習いってところでしょうか?
ともあれ、大連から東港まで、やく4時間半ほどかかります(飛行機に乗っていたのは3時間ぐらいなのに・・・)。いざ、出発!
待合室に入る前に乗客の手荷物検査がある。
左手に見えるのが検査装置だが、私のときは使われず、
右側の黄色い腕章をつけた係員にバッグを開けて見せただけ。
改札口の一つ。切符の確認はバーコードスキャンで行う。
係のお姉さんがちょっと不機嫌そう?
今回乗ったバス。「大連―丹東」とあるが、丹東市は東港市の東に位置する
バスステーションを発車したバスは、大連の市街地を走っていきますが、5分も走らないうちに、停留所が近づいてきました。
大都市の市街地だけあり、バス路線も多く、たくさんの人が待っています。
誰が乗るのかわからないし、停留所のたびに停車するんだろうか、めんどいなあ、などと思っているうちにバスがスピードを落とし、ドアの脇に立っている車掌さんがマイクを使って「丹東、丹東、丹東・・・」とこのバスの到着地を告げ始めました。
その声は、拡声器を通じて、バス外部に響きわたります。すると、このバスに乗りたい人が、バスに近づいてきました。そして、その人たちを乗せるべくバスが停まります。
なるほど、こうやって乗客を拾っていくわけか、と合点がいきました。
各地へ行くバス。運転手さんや車掌さんには何も言われなかったが、
右手前の女性からは「勝手に写真を撮らないでください」と注意された
こんな具合にバスの旅は続くんですが、街の中心を離れると、今度はバス停自体が存在せず、バスに乗りたい人は道路脇で適当に待っているんです。
もちろん、何かほかの用事で道端に立っている人もいるので、それらしき人がいる場合に車掌さんはマイクで「丹東、丹東」と叫び始め、興味がある人は近づいてくるという仕組み。
場合によっては、「XX(地名)は通る?」「XXまでバス代いくら?」などというやりとりも、交わされます。
こうしたとき、バスはノロノロ運転まで速度を落とし、車掌さんがドアを開けて話したり、一時停止したり。このバスは公共交通機関なんですが、実入りがよければ、それは従業員の給料にも反映されるらしく、なるべく多くの人を乗せたいようです。そういうわけで運賃の交渉なども多少あるらしく、「高いよ!」なんて声もありました。
とまれ、交渉が成立すれば、お客さんが乗り込んでくるわけです。
また、特にバス停の標識などはないようですが、停留所として予め決まっている地点もいくつかあり、そうした場所では10分ぐらいバスが停車します。
こういうとき、運転手さんや乗客は外に出て煙草を一服したりするんですが、物売りがペットボトル入りの飲み物や、パンやお菓子、魚肉ソーセージ(けっこう一般的で、駅の売店などでも必ず売っています)、果物などを売りにきます。
日本みたいに自販機やコンビニがあちこちあるわけではないので、こうした物売りが商売として成り立つのでしょう。
市街地を離れると、うねうねと続く道の左右に畑がどこまでも広がり、民家が点在するような眺めになります。
例によって停留所なんてないんですが、乗客は「この坂を下ったあたりで降ろしてくれ」という感じで自由にリクエストして降りていきます。
道路脇のガードレールをひょいと乗り越えて、畑の中の一軒家に帰っていくとか、そんな感じ。逆にこうした場所から乗ってくる人もいて、時には遠くのほうから手を振りつつ、走ってきたりとか。バスの方も心得ていて、ちゃんと停まってそういう人を待っています。
と、こんな調子でバスは走り続けるわけですが、道中が本当に長い。
退屈しのぎというわけで、音楽ビデオの放送もしてくれるんですが、「これ、さっき1度見たじゃない?」っていうぐらい。
それから、日本の長距離バスなら、トイレ休憩が1時間に1回ぐらいありますが、今回の旅では途中3時間半ぐらいは全然なくて、なぜかあと1時間で私たちは降りるというあたりで、突然トイレ休憩がありました。
このへんも適当といえば適当ですが、思うにどうしても必要なら申し出ればどこかで停まってくれるでしょう。悪くいえば大ざっぱ、よく言えばおおらかなのが、中国のいいところですから。
基本的に高速道路を利用する長距離バスなら、バスにトイレがついているそうで、そちらのほうが各駅停車?でない分早いし、快適なようです。次回はそちらにも乗ってみたい。
ちなみに、今回乗ったバスも、途中ちょっと高速道路を利用していたようです。
バスの切符。右側中央に65.5(元げん)とバス代が。
日本円で約\900。4時間半も乗るわりには安い?
道路標識に「東港」という文字もちらほら出てきて、そろそろ着くのかなと思っていると、車掌さんが「もう着くよ」と教えてくれました。外国人だとわかって、親切に教えてくれたようです。
確かに、見覚えがある景色が拡がってきました。
やれやれ、長かったバスの旅もどうやら終わり。
バスは東港のバスステーションそばの道路脇に停まりました。車掌さんがまず降りて、トランクから荷物を出してくれます。
はあ~、疲れた。
しかし、日本とは違うバスの旅、なかなか貴重な体験でした。
機会があれば皆さんも、1度中国の長距離乗り合いバスに乗ってみてください。
では、今回はこのへんで。
KH