こんにちは、YJです。
先日、印刷の余白Lab.の野口さん+Keitaさんと川村さんが坂戸事業所を見学にいらっしゃいました。
野口さんがご自身のメールマガジン(印刷の余白Lab.メールマガジン)に見学レポを書いていましたので、転載します。
野口さん、また、いつでも来て下さい。大歓迎です!
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7月28日、埼玉は坂戸市まで印刷所見学に行ってきました。
今回はその見学レポートをお届けしたいと思います。
訪問させていただいたのは、欧文印刷株式会社さまの坂戸事業所。刷版出力からオフセット印刷、並製本までのラインが一通り揃った、かなり広い工場です。80人ほどが働いていらっしゃるとか。
同行メンバーは埼玉で地域参加型アートプロジェクトを運営してるKeitaくん(実家と親族が印刷所)と、現代アート出身デザイナーの川村さん。まずは新技術開発室の山崎さんにお話を伺います。
欧文印刷さんは、もともと出版印刷ではなく製品マニュアルや商業印刷をメインでやっていらっしゃる会社で、有名メーカーの取説を外国語に翻訳するドキュメント制作から、法人向けの印刷を得意としています。
しかしマニュアル類も、データだけ作成して刷るのは印刷費の安い海外でということも多くなってきて、いろいろと新しい展開を試みられています。
そのひとつが、4年くらい前から提供されている「感性価値印刷」。UVニスを使った高光沢とざらざらの混在するコーティングやパールニスなど、ニスコーターを使った高品質な表面加工を提供しています。
今日ご案内いただいている山崎さんこそ、それを支える研究開発をされてるニスのプロなんですね。
(ニスについては下記バックナンバー参照。
・『ニスの多様性』→ http://yohaku.biz/mmgwp/?p=93
・『ニスの多様性のつづき』→ http://yohaku.biz/mmgwp/?p=105 )
また感性価値印刷を使った「プロダクト開発・販売」も進めていて、特殊コーティングしてホワイトボードのように使える紙「消せる紙」や、ニスの組合わせで面白い効果を出したブックカバー「CANSAY」をすでに商品化しています。製造業が物販もやることの挑戦については、印刷業に携わる方々を身近に見ているKeitaくんには感慨深かったよう。
ちなみに欧文印刷さんには本社(本郷)とここ以外に、板橋にオンデマンド専門の事業部もあります。うーん、幅広い対応力
そして、実際の印刷現場へ。仕事でも仕事以外でもいろいろお世話になっているのですが、埼玉の工場は私も初めて。楽しみです。
まずは印刷用の版を作る製版。
最近ではデータから直接、印刷用の刷版を焼付ける『CTP製版』が主流で、前からあるフィルムを出力して金属版へ焼付ける方法は、ずいぶん減ってきています。欧文印刷さんでは97%くらいはすでにCTPなのだそう。
そのCTPで版を出力するのが「プレートセッター」なのですが、なんというか……「でっかいレーザープリンタみたい」なんです。
プリンタの給紙トレイのでーっかいやつに、厚さ0.24mmのアルミプレートが入っていて、それに画像が焼付けられて出てくるイメージ。CMYKの4色フルカラーの場合は、1つのデータから4枚の版が出力されてきます。1時間あたり40枚の版が出力できるそう。これもまるでプリンタみたいですね。
プレートには純度の高いアルミを使っているので、使えなくなったものはアルミサッシになるらしいです。へえええ。
そして印刷工程へ。
欧文印刷さんには、コーター付きの4色オフセット機、両面印刷用の8色機をはじめとして、菊全判?半裁の大型オフセット機が6台あります。
あまりの大きさにスケール感がおかしくなります。上で人間が生活できそうなくらい。
印刷機の上にあがって、インキローラーが回っているのも見せていただいたのですが、川村さんも「上から覗いたのは初めて」と楽しそう。
欧文印刷さんでは1台の印刷機に2名のオペレーターがついていて、1人がマシンの横で刷上がりの濃度を測ってチェックし、インキの微妙な調整を加えていきます。4色機の調整を担当するには10年くらいかかるとのこと。最後は人の目なんですね。
最後に製本課へ移動。
坂戸事業所では、折りから貼込み、、中綴じ、あじろ・無線綴じが可能です。印刷フロアのインキの匂いの代わりに、ガシャンガシャンという工業的な音がBGMになっています。
1階は中綴じ機がメインのフロア。
折り機で8ページ、16ページ単位に折られた紙(折り)を、中綴じ機が順に重ねて丁合していきます。でも、その折りを補充するのは自動ではなく人間の仕事。このとき紙の向きが違っていたり、違う折りを補充してしまうといわゆる「乱丁」になります。
それを防ぐために、丁合する部分にはCCDカメラが取り付けられていて、間違ったものが流れてくるとセンサーが自動で止めるようになっているのだとか。アナログなのにハイテク!
そしてでっかいホチキスで止められ、綴じられていない3方の余分なところをカットして、できあがり。丁合から最後にカットするまでは、すべてひとつのラインで行われています。
そして2階のあじろ・無線綴じ機のフロアへ。こちらは背表紙のある冊子や並製本ができるマシンです。はじめに目に入ってくるのは、壁ぎわに沿ってプラレールのように部屋を取り囲むコンベア。
並製本では、丁合したあと、背表紙を糊で固めてから、中綴じと同様に余分な部分をカットするのですが、このとき糊が充分に冷めていないと、背が固まらずにぐにゃっと曲がってしまうんですね。糊が冷める時間をかせぐために、ぐるーっと長いコンベアに乗せて、カットされるところまで運んであげるわけです。
その背固めをする糊にもいろいろ種類があり、まず本文をひとつにまとめる糊、表紙をつけるため表紙・裏表紙に当たる部分のフチに塗る糊、最後に固めた本文の背中に塗る糊、と、3種類の糊が使われています。ただの糊付けと思いきや、けっこう複雑。
なんだかこの時点で、見学者3人にはちょっとしたアミューズメント気分が広がっていたりして。製本はモノが加工されていくところがすべて見えるので発見がいっぱいです。残念ながら、これは現場でないとお伝えできないです……。
それにしても製本専門でもないのにこの製本設備の豊富さは……?
実は欧文印刷さんは戦前は製本所だったのと、主力のひとつである製品マニュアル類は守秘義務があり、自社で完結させる必要があるためとのこと。折りや製本も、外注に出すわけにいかないんですね。
デザインデータからは想像できない、物量の動く圧巻のボリュームと、一度に得た情報量に、見終わってから3人でしばらく呆然としてしまったほど。
印象的だったのは機材のボリュームもさることながら、現場で働いていらっしゃる方々の明るさ・丁寧さ。作業中でも、きょろきょろする来訪者にひとりひとりが挨拶してくださり、作業工程を丁寧に順を追って説明してくださったり、この方々に任せたい! と思える素敵な現場でした。
webでも人柄出てるなーと思うのが、欧文印刷さんのスタッフブログ。
野球部の話とか、事業所脇に巣を作った鴨を見守る話とか、読んでてほのぼのとしてしまいます。いいなー、食いっぱぐれたら中途で採用してください(ちょっと本気)。ご協力ありがとうございました。
ということで、長々(ほんとに!)と工場見学レポートでした。また機を見て見学に行きたいなーと思っているので、興味のある方はぜひぜひ声かけてくださいませ。
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YJ
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